熱性けいれんの素朴なギモン―ジアゼパム坐剤 3回目はよい?だめ?

熱性けいれんを起こした子では、次から熱が出たときにジアゼパム坐剤で熱性けいれんを予防することがあります。熱に気づいたら1回、その8時間後にもう1回使い、熱が長く続いても基本的には追加しません。
ジアゼパム坐剤がない海外では、熱がある間ずっと似た薬を内服させたりしています。
なぜ座薬はこの使い方なのでしょう?

①ジアゼパム坐剤(ダイアップ🄬)の製品情報によると、この使い方で1回目に使った15-30分後から24時間後にかけて、ジアゼパムの血中濃度はけいれん予防に必要なレベルを維持できます。

②熱性けいれんのガイドラインでは、熱性けいれんのうち78%は発熱から24時間以内に起きるので、この時間帯を予防できればよしとされます。ただ、根拠はアメリカの同じグループが出した2本の論文(③、④)でした。

逆にいえば、熱性けいれんのうち22%は発熱から24時間以降に起きています。そこで、③、④よりも後に公開された論文も確かめました。
発熱から24時間以降に熱性けいれんが起きた割合は、トルコ(⑦)とイタリア(⑩)の論文ではそれぞれ3%、8%と少ないものの、アジア(⑤,⑥,⑧,⑨,⑪)の報告は15-28%とガイドラインと近いものでした。
このような子の熱性けいれん予防には、3回目のジアゼパム坐剤の意味があるかもしれません。

では、「遅れて現れる熱性けいれん」を予防するならば、ジアゼパム坐剤の3回目はいつ使うとよいでしょうか?
①によると、8時間間隔でジアゼパム坐剤(0.5mg/kg)を2回使うと、けいれん予防に必要な血中濃度は30時間ほど維持されます。1回目の24時間後(2回目の16時間後)に3回目を使えば、1回目から48時間近くは血中濃度を維持できると予想されます。
一方、薬の副作用も気になります。ジアゼパムを使った後に、ジアゼパムが分解されてできるN-デスメチルジアゼパム(DDZ)が体に溜まります。このDDZもジアゼパムのように眠気やふらつきの原因になります。
大人のデータですが、DDZの血中濃度はジアゼパム坐剤を使ってから2日半後まで上がり続け、そのあと3日以上かけて半分まで減ります。3回使うと3回ぶんのDDZが体にたまり、2回の時よりも副作用が出やすくなります。

というわけで、
3回目のジアゼパム坐剤は、自己判断では使わないようにしましょう。
3回目が必要かどうかは、必ず小児科医に判断してもらいましょう。