インフルエンザの時期になると気になる―いい迅速検査って?

今年はインフルエンザが早くも大流行しています。
なぜ今年ばかり早くも流行したのかは、ほかの先生たちが解説しているので、ここでは繰り返しません。
ただ、連日たくさん検査をしていると、意外な結果が出ることがあります。家族全員陽性なのに一人だけ陰性、全く家から出ない赤ちゃんだけ陽性…
検査結果はどこまで信頼できるのか、陽性のでやすさはどうなっているのか、解説します。

インフルエンザを例にすると、検体にウイルスがいるかどうかと検査した結果の組み合わせは、次の4通りになります。

  • ウイルスがいる検体で、検査が陽性だった
  • 1′ウイルスがいる検体で、検査が陰性だった
  • ウイルスがいない検体で、検査が陰性だった
  • 2′ウイルスがいない検体で、検査が陽性だった

1と2は正しい結果、1′と2′は間違った結果ですね。
それぞれの確率は次のように呼ばれています。

1=感度 1′=偽陰性率 1+1′=100%
2=特異度 2′=偽陽性率 2+2′=100%

検査の正確さとしては、もちろん理想は感度100%、特異度も100%です。
しかし、ほんの少しのウイルスでも見つけようとすると(感度を上げる)、ウイルスがないのに間違えて「いる」と判断すること(偽陽性)が増えてしまいます。

感度を上げる → 偽陽性が増える = 特異度が下がる

また、ウイルスではないものを見間違えないよう慎重にすると(特異度を上げる)、少しだけいる本物のウイルスを「いない」と判断すること(偽陰性)が増えます。

特異度を上げる → 偽陰性が増える = 感度が下がる

ウイルスを完璧に見つけることと、ウイルスでないものを完璧にスルーすることとは、どうしても両立が難しいのです。

では、感度と特異度はどちらを優先するとよいのでしょうか?
これは検査の目的によって変わります。
インフルエンザの診断では、「陽性だったら間違いない」のが大切かと思います。また、「間違ってインフルエンザと言われて、学校には行けないし要らない薬も飲まされた」ということは避けたいです。間違った陽性を減らす、つまり感度が下がってでも特異度が高いほうがよいでしょう。
逆の例にはがん検診があります。がん検診は早期発見、早期治療をめざしているので、「がんがある人を決して見逃さない」ことが大切です。つまり、偽陽性が増えてでも=特異度を下げてでも、感度が高いことが優先されます。

市販のインフルエンザ迅速検査キットの感度は、臨床研究では55%(1), 65%(2)と報告されています。インフルエンザの患者さん10人のうち6人くらいが陽性、つまり4人くらいは陰性になる計算です。特異度はいずれも100%近くです。

このように、検査の限界があるため「検査が陰性でも要注意」という情報がでてきます。
たしかに、今のような大流行期ではそのとおりだと思います。
しかし、夏のコロナの流行期に同時検査したインフルエンザが陰性だったら、「でも、実はインフルエンザかもしれない」と思うでしょうか。

この2つの直感のちがいについては、次回のコラムで触れたいと思います。