泣き入りひきつけのギモン―泣いたらけいれんしたのですが?

小さなお子さんは、様々な理由で「けいれん」します。
前回までのコラムで触れた熱性けいれんは発熱をきっかけとして、脳神経が過剰に興奮して起きるものでした。
ほかにも、①「大泣きしたと思ったら、顔が真っ青になって体が硬直した」
②「転んで痛がったと思ったら、急に意識がなくなってびくびくした」
ということもあります。

泣いたと思ったら起きる体の硬直やけいれんを「泣き入りひきつけ」「憤怒けいれん」などと呼びます(コラムでは、以下「泣き入りひきつけ」と表記します)。
泣き入りひきつけは頻度が高く、熱性けいれんと並んで親を不安にさせる症状でしょう。

泣き入りひきつけは大きく2つの型に分かれ、上に示した①を「チアノーゼ型」、②を「蒼白型」と呼びます。この2つはきっかけや体の中で起きていることが異なるので、区別して理解するのがよいです。

泣き入りひきつけの大部分はチアノーゼ型です。かんしゃくなどで激しく泣いたときに、息を吐いたまま止めてほどなく顔色が悪くなり(チアノーゼ)、そのまま意識を失います。
体は脱力することも、びくっとする・突っ張るなど動くこともあり、この体の動きが「ひきつけ」「けいれん」などと表現されます。
その後、1分もしないうちに意識は回復して、眠気や不機嫌といった症状は基本的に残しません。

チアノーゼ型の泣き入りひきつけでは、見るからに酸素不足に陥ってひきつけを起こしているように思われます。しかし、鏡を見ながら10秒、20秒と息をこらえても、まったくチアノーゼになりません。どうも酸素不足以外のことが加わって、泣き入りひきつけが起きているようです。
そのひとつとして、自律神経の反応が関わるのではと言われています。
人間には、息をこらえると心拍が遅くなる反応(潜水反応)があります。また、息をこらなくても、息を大きく吸うと心拍は早くなり、息を吐くと遅くなります。
泣き入りひきつけを起こす子ではこの心拍の変動が大きく、その大きさは泣き入りひきつけの頻度と関連するという報告があります。

息を吐いたまま止めることで酸素の取り込みが減る、自律神経の反応を介して心拍が遅くなる、などが重なって脳への酸素と血流が減り、泣き入りひきつけが起きると考えられます。
つまり、「ひきつけ」「けいれん」という言葉からイメージする「脳神経が過剰に興奮する症状」ではないと
分かります。また、意識を失うと息止めが治まって呼吸が再開し、脳血流も回復して意識も速やかに戻ると考えられます。泣き入りひきつけで基本的に脳障害を起こさないのは、そういう背景があるのでしょう。

急に顔色が悪くなる、意識を失うという様子はとても心配ですが、泣き入りひきつけと分かれば心配しすぎずに見守ることができることと思います。