インフルエンザの時期になると気になる―迅速検査が陰性でも心配なのはなぜ?
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夏にコロナが流行して迅速検査をすると、検査キットによってはインフルエンザも検査できます。このときインフルエンザが陰性でも、疑問はないでしょう。
一方、インフルエンザが大流行していて、前日から熱とのどが痛くて検査したものの陰性だと、「検査が早かったですか?」「再検査できますか?」と言われることがあります。
この違いはどこからくるのでしょう?
前回、迅速検査キットの正確さについて触れました。
ウイルスがいる/いないと分かっている検体での検査の正確さです。
しかし、患者さんは「わたしインフルエンザなのですが、検査したら陽性になりますか?」とは受診しません。
「熱があってのどが痛いので、インフルエンザを調べてほしい」と受診します。
ポイントは「検査前には、インフルエンザかどうか分からない」ことです。
話を簡単にするために、熱があるひとみんなに迅速検査をするとしましょう。
熱があるひとが迅速検査で陽性だった場合、次の2つの関門をクリアしています。
- 熱がある人がインフルエンザである
- その人が迅速検査で陽性になった
前回書きましたが、検査では「ウイルスがいるのに陰性」「ウイルスがいないのに陽性」ということがあります。
つまり、熱がある人の検査結果と原因の組み合わせは、次の4通りになります。
- ①真の陽性 検査が陽性、インフルエンザである
- ②真の陰性 検査が陰性、インフルエンザではない
- ③偽陰性 検査が陰性、インフルエンザである
- ④偽陽性 検査が陽性、インフルエンザではない
分かりやすくするために、「1万人の発熱患者が現れた!」場面を想像しましょう。
この中にインフルエンザが何人いるかは、その時の流行だけで決まります。迅速検査がどんなに優秀でも関係ありません。
この「発熱患者がインフルエンザである確率」を「事前確率」と呼びます。このコラムの執筆現在、検査をするとほとんど陽性なので、ここでは事前確率を80%としましょう。
- インフルエンザである 8000人
- インフルエンザではない 2000人
迅速検査の平均的な正確さとして「感度65%、特異度98%(1)」の数字を採用します。
この「1万人の発熱患者、うち8000人がインフルエンザ」全員に検査をすると、検査結果と原因の組み合わせとそれぞれの人数は
- ①検査が陽性、インフルエンザである 8000×0.65=5200人
- ②検査が陰性、インフルエンザではない 2000×0.98=1960人
- ③検査が陰性、インフルエンザである 8000 – 5200=2800人
- ④検査が陽性、インフルエンザではない 2000 – 1960=40人
検査結果からみた検査の正しさは、
- 陽性的中率 検査が陽性のひとが、本当にインフルエンザだった
- 陰性的中率 検査が陰性のひとが、本当にインフルエンザでなかった
と呼びます。今の場面では、
- 陽性的中率=①÷(①+④)
=5200÷(5200 + 20)×100=99.2%
検査が陽性ならば、インフルエンザといってよい - 陰性的中率=②÷(②+③)
=1980÷(1980 + 2800)×100=41.1%
検査が陰性でも、5人中3人はインフルエンザ
…これで、「陰性だったけど、検査が早かったですか?」の理由がわかるでしょう。
事前確率が十分高い、つまり大流行の真っ最中では、検査が陰性でも実はインフルエンザであることが少なくありません。いちどは再検査を考えてもよいのかもしれません。
ただし、再検査には医療保険上のルールがあります。必ず病院の指示に従いましょう。
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