こどもの頭のけが―なにが危ない?

子どもはどんなに気をつけていても、思わぬ行動でけがをします。
特に頭のけがは手足などのけがと異なり、脳神経への影響が心配になります。
今回からは、子どもが頭をぶつけた(頭部外傷)どうするかについて触れます。

・医療者は何を気にしているか?
頭をぶつけた子どもを親が病院に連れていくのは、頭の中の出血や脳へのダメージがないか心配だからでしょう。

その心配に応えるために、画像検査としてMRIとCTがあります。
MRIは細かく詳しい検査ができますが、少しでも動くと画像が大きく乱れてしまい、
小さな子どもで急に行うのはとても難しいです。
頭のけがでおきる骨折や出血は、CTのほうがMRIよりも見つけやすいです。
ただ、CTは放射線検査なので被曝が避けられません。
そこで、「被曝してでもCT検査をする価値があるか?」と医師は考えています。

・だれにCT検査を勧める?
この20年ほどで、この疑問に答える研究がいくつか行われました。
医療現場でも使われているのは、主に以下の3つです。

PECARN (Pediatric Emergency Care Applied Research Network) (1)
CATCH (Canadian Assessment of Tomography for Childhood Head injury) (2)
CHALICE (Children’s Head injury Algorithm for the Prediction of Important Clinical Events) (3)

これらはいずれも、「どの子どもを入院させたほうがよいか、どの子どもに手術が必要そうか」と、
重いけがを拾い上げることが目的です。
なので、手術も入院も要らない軽いけがまでは、見つけようとは意図していません。
それでも、「あぶない頭のけがの特徴」は読み取ることができるでしょう。
小児神経学会でも、これらの研究をもとにした医師向けの提言を出しています。(4)

・頭の危ないぶつけかた
上の研究には、「こういう頭のけがは危ないことが多いので、CT検査したほうがよい」という例があげられています。
大きく分けると、①自動車に乗っているときの事故、②自動車以外での事故、③頭への物体の衝突、④高いところからの転落があります。
①は原則として病院を受診するので、それ以外を少し詳しく見ます。

②には、ヘルメットをかぶらずに自転車に乗っていて転んだ場合などが含まれます。
③は衝撃の強い物体(PECARN)、早く動く物体(CHALICE)をあげています。
シュートしたサッカーボール、空振りした野球のバットなどが当てはまるでしょう。
④はCATCHで「階段5段以上から転落」とある以外は、高所からの墜落を取り上げています。墜落した高さも90cm以上(PECARN 2歳未満、CATCH)、1.5m以上(PECARN 2歳以上)、3m以上(CHALICE)と、ばらつきがあります。
家の中で多い「階段からの転落」については、この墜落した高さをあてはめると参考になるかもしれません。

・ぶつけたあとの危ない症状
頭のぶつけかたが危なくなくても、その後の症状によってはCT検査を勧めます。
3つとも、①意識障害、②意識状態の変化、③意識以外の症状に注目しています。

①はGlasgow coma scale (GCS)という点数で表します。満点は15点で、基本的には15点未満、
CHALICEのみ「2歳以上はGCS 14未満」でCT検査を勧めています。
表を参考にすると、
・呼びかけないと眼を閉じてしまう
・いつものように話したり笑ったりしない
・目的にかなった動きを自発的にしない
という時に、CT検査を考えることになります。

<GCS>

(参考文献4より)

②は一時的な意識消失(PECARN、CHALICE)と意識の変容に分かれます。
意識の変容は分かりにくい表現ですが、次のように説明があります。
・PECARN2歳未満:ふだんの様子とちがう
・CATCH:診察時に(ふだんとちがって)興奮している
・CHALICE:傾眠(うとうと)、健忘(頭をぶつけたことを覚えていない)
要は、頭をぶつけた後にいつもと様子がちがう気がすれば、検査を考えてよいでしょう。

③は強い頭痛や嘔吐のほか、CHALICEではけいれん(てんかんの持病がない人)、
巣症状(体の一部の麻痺など)をあげています。

・さいごに
以前のコラムで、蒼白型息止め発作のお話をしました。
不意の痛みで血圧が下がるなどの反応がおきて失神するもので、脳神経の症状ではないとされています。
ただ、頭をぶつけて意識を失ったときに、ぶつけた痛みで息止め発作を起こしたのかどうかを
その場で判断するのは難しいです。
みなさんは無理に息止め発作かどうか判断せず、受診するほうが安全でしょう。